「うぶ……。む……ふ……」
 千佳が苦しそうにしたら、翠はすぐに腰を上げられるように脚に力を入れた。だが、翠の椅子となった恋人の顔からは、少し荒い息が漏れるだけで、拒絶の反応は無い。
 座るという動作は、リラックスとほぼ同義である。疲れた時に腰を下ろしただけで、人は身体から力を抜き、心は安らぎを覚えるのだ。だが、その緩み切った状態で刺激を受けたらどうなるのだろうか。答えは、翠のお尻の下にあった。
「ひゃうっ! あ……あ……あ……」
 千佳の鼻息がこそばゆい。舌は唾液と愛液を混ぜ合わせて卑猥な音を立てている。千佳の舌遣いが直接は見えないだけに、普通に舐められるのとは微妙に異なる気持ち良さが感じられた。
 普通、仰向けになっているときに気持ち良くて腰を突き出すことはあっても、腰を落として快楽を貪ったことは無い。まるでジグソーパズルのピースのように、クラスメイトの顔が翠の秘部に収まっていた。ピースとピースと繋いでいるのは、舌と唾液と喘ぎ声。
 ふと正面に目をやると、康史が楽し気に娘を見つめていた。
「ふふ、すごくイヤらしい眺めだよ、翠」
 翠もまた、自分の恋人と交わる父親を興味深げに見た。
「他のヒトがセックスしてるとこ、始めて見た。お父さんも、イヤらしいことしてる……」
「おいで、翠」
「お父さん……。んん……」
 顔を寄せてきた父親に、翠も顔を寄せて唇を重ねた。
 父親は千佳を肉棒で貫き、翠は千佳に口舌の奉仕を強要している。
 恋人と、恋人と、恋敵が、淫らな肉の三角形を作って交わっている。
 三人とも、口と性器をお互いに絡ませ合って、二人では不可能な快楽を味わっていた。
「んふうっ……。あたし、あたしっ……、もうっ……」
 翠の媚肉を激しく舐め回していた千佳は、恋人のお尻に指を食い込ませながら最後の喘ぎを上げた。同時に翠の敏感なクリトリスを甘噛みする。
「ひああっ! ち、千佳っ!」
 愛しいクラスメイトの舌がもたらす強くて甘い刺激に、翠の腰が抜けそうになった。そのままお尻を千佳の顔に押し付けて、さらなる悦楽を貪ろうとする。
「二人ともっ、オレもそろそろイキそうだ……」
 千佳に肉棒を突き入れていた康史は、腰の動きをさらに早めた。はた目にも、間もなく男の絶頂が訪れるのが分かる。
「お……父さんっ! お父さんっ! 千佳っ! アタシ……、アタシもっ……!」
 翠はクラスメイトと交わっている父親の首に抱き付いた。そして飢えたように舌を出し、康史と濃厚な口付けを交わす。お互いに舌を絡め、唾液を混ぜ合い、口内を犯し合う。
「い……あああっ!」
「お……あああっ……!」
「ふあ、ああああっ!」
 三人は、三人それぞれの声音で甘い絶頂の叫びを上げた。身体を震わせ、快楽に身をよじり、内から沸き上がる快感の大波を味わいつくす。
「ふ……はあああ……」
「はあっ、はあっ、はあっ……」
「んん……ふ……」
「おっと」
 満足そうな笑みを浮かべて脱力した翠を、康史はふわりと抱き締めた。そして、二人の下で脱力している千佳を潰さないように、娘をクラスメイトの脇に横たえる。千佳の翠への想いを察してか、康史自身はベッドを降りてソファに腰を下ろした。
 ベッドの上で、二人の少女が裸で喘いでいる。
 ソファの上では、一人の男が満足げに娘たちを眺めている。
 三人の男女はみな、一様に満足げな笑みを浮かべて脱力していた。
 三人が三人、それぞれの想いを吐き出して愉悦の行為を楽しんだのだ。思うところも全て吐き出し、素直な感情のままに、お互いの身体を貪り合った。それは、ひどく心地良い感覚であった。一人でするのとは違う。二人で交わり合うのとも異なる。三人で愛し合ったことに、翠は感動すら覚えていた。出来れば、康史と千佳にも同じ感動を覚えてもらいたい。そう思わずにはいられなかった。
「ねえ、千佳」
「……んー?」
 二人は今、裸のまま仰向けでベッドに横たわって手を繋いでいる。それ以外は何もしていない。しかし、今はそれだけで十分な心境である。
「アタシは、お父さんのコトが好き。でもって、千佳のコトも好きなの。だから、千佳もお父さんのコトを好きになってくれると、嬉しいな」
「そ、そんなの……ズルいわ……。翠ばっかり、良い思いして……」
「千佳だって、気持ち良くなっていいのよ? 今だって、そうだったでしょ?」
「そ、そう言う意味じゃ……、無い……」
「そう言う意味よ。身体だけじゃない。心も気持ち良くなって欲しいの。千佳は、アタシの事が好きなんでしょ? アタシの全てが好きなんでしょ? だったら、お父さんが好きなアタシも好きになって欲しい。お父さんごと、アタシを好きになって欲しいな」
「おじさま……ごと……」
「そう。アタシが好きな人を、千佳にも好きになって欲しい。自分の好きなものって、他の人も好きだったりすると嬉しいでしょ?」
「確かに、そうだけど……。それって色恋とは別なんじゃ……」
「同じよ。みんな勘違いしてるのよ。その証拠に、昔の王様は奥さんがいっぱいいたんだし、それに、一夫多妻制の国は今も確かに存在してるんだもの」
「……ここは日本よ」
「そうね。日本だわ。だから大丈夫」
「……は?」
「だって、日本でも、それは珍しいことじゃないもの」
「え、えと……、翠?」
「愛人、二号さん、お妾さん、内縁の妻に通い妻……、他にもあるかな」
「な、何を言ってるの?」
「そういう言葉が存在する意味よ。辞書にも載っているってことは、一般的な言葉って事でしょ? だから、愛人とか、二号さんとか、珍しいことじゃないのよ」
「き、詭弁よ!」
「まあ実際、そんなに数は多くは無いでしょうね。でも、奥さんが二人も三人もいる人って、それだけの甲斐性がないと無理なんでしょうけど、でも、逆に言えば甲斐性さえあれば……。千佳も言われたこと無い? 愛人契約を結ばないかって?」
「そ、それは……、ある……」
「でしょお? 男の人って女が大好きなのよ。でもって、囲いたがるものなのよ」
 翠は父親の方をチラッと見た。康史は苦笑しているだけである。
「えーと、話しがズレちゃったわね。とにかく、千佳にはお父さんごと、アタシを好きになって欲しいの。だから、今度は二人でしてみたらどうかな? アタシは見てるから」