「むー、なんか、モヤモヤする……」
「そりゃそうでしょうしょ。騙してるつもりが、自分の方が騙されてたんだから」
「ぶー……。それにさー、確かにお母さんに対しては問題が解決したんだけど、アタシが何かしたからっていうわけでもないしー……」
 母親を騙すために、父親を騙し恋人を騙して乗り切ろうとしていた翠であるが、父親と恋人に騙されているとは露とも思わなかった。よくある話ではあるが、騙している人間は自分が騙されていることに気付かないというのは、どうやら真実らしい。
「ウソには自信があったんだけどなぁ……」
「そうねー、援助交際のことをずっと隠し通せていたんだし。それに、私もおじさまに買われてなかったら、今、あなたとこんなことにはなっていなかったかも」
 こんなこととは、翠のベッドで二人、一糸まとわぬ姿で身体を合わせ、それを翠の父親がソファで悠然と眺めているという状況である。
 翠はチラリと父親の方へ目を向けた。康史の方も二人の少女と同様に何も身に着けておらず、さらには股間の屹立を隠そうともしていない。
「そうでもない。オレも翠も、そして遠山さんも、お互いがお互いを想い合っていたから落ち着くところに落ち着いたんだよ。きっかけはあの掲示板だけど、これはきっと必然だったのさ」
「……私はおじさまなんて、大キライなんですけど」
「そうかい? オレは君のことも好きだよ」
「聞いた、翠? おじさまってば浮気性よ」
「まあ、それを言ったら、アタシの方がお母さんからお父さんを寝取ったんだけどね」
「クッ……」
「なんで悔しそうなのよ。アタシはお母さんのことも好きなんだから、千佳もアタシのお父さんのことを好きになってもいいのよ?」
「……翠の貞操観念が非常識なのは分かってるつもりだったけどさ、翠ってば、いっつも私の想像の斜め上を行くのよね」
「それ、バカにしてるよね?」
「感心してるのよ。私とおじさまが、翠の知らないところでエッチしてたのが分かったはずなのに、それには何のリアクションも無いんだもの」
「そうかな? そうかも。それじゃ聞いてみようかな。アタシのお父さんとのセックスはどうだった?」
「は……」
 あまりにもストレートな問い掛けに、千佳は二の句が継げないようであった。仰向けになっている恋人を見下ろしたまま、呆れたような視線を想い人に向けている。
 クラスメイトに対して、自分の父親とのセックスの具合を聞く。翠自身、この質問は非常識だと理解している。だが、それ以上に、自分を組み敷いている恋人が目を白黒させているのが面白くてたまらない。
「……優越感」
「はい?」
「私って、やっぱり悪い人間なのね。おじさまとエッチしたのは翠と一緒で、偶然掲示板で会ったからなんだけど、翠よりも先におじさまと寝たことに、優越感と背徳感を覚えたわ。だから、すごく良かった……」
「ん? んん? ちょっと待ってくれ。オレとヤッたときには、キミはオレが翠の父親だって気付いていたのか?」
「ええ。翠の部屋でおじさまの写真を見たことがあったので」
「参ったな……」
 娘とそのクラスメイトが裸で絡み合っているのを楽し気に見ていた康史であったが、バツの悪そうな顔で二人から目を逸らせた。
「ふふ、おじさまとのセックスがどんなだったか、知りたいのよね、翠?」
「え? ああ、うん」
「優越感が二、背徳感が三、嫌悪感が五よ」
「……ふえ?、半分が、イヤイヤだったの?」
「だって、おじさまってば、自分の事を『パパ』って呼ばせてたのよ? 『ああん、パパ良い! 愛してる! パパとのセックスさいこー!』ってね。私はそれが、翠のことだって分かってたから……」
「げ……」
「いや、待て待て! そこまで言わせた覚えはないぞ! 『パパ』と呼ばせたのは本当だが、あとはキミが勝手に叫んだんだ!」
「分かってますよ、おじさま。だってアレ、いやがらせですもの」
「は……」
「それに、相手を悦ばせるために演技するのは、翠なら分かるでしょ?」
 商売という意識があったせいか、翠自身、相手を悦ばせる為にベッドで演技をしたことは、一再ならずある。
「うん、まあ……」
 恋人になったばかりの少女に組み敷かれている翠は、侮蔑を含んだ視線を父親に向けた。
「お父さん……、アタシがお父さんのことを『パパ』って呼ぶのを嫌がったのは、そういう理由だったのね」
 美少女二人の睦み合いに屹立させていた股間の凶器が、見る見るしぼんでいく。本当に、オトコというのは分かりやすい。
「ああ、まあ……。現実的に、お前と恋仲になるなんて有り得ないと思っていたからな、オレなりに一線を引いていたんだよ。『パパ』って言葉はそういう意味も含むだろう?」
 康史は、愛する娘の代わりに援助交際掲示板で同じ年頃の少女たちを買っていた。それは翠も承知している。それに、康史が少女たちとどんなセックスをしてきたのか、いずれは聞こうと思っていた。だから、いい機会ということで面白半分に千佳に聞いてみたのだが、返ってきたのはなんとも表現に困る内容であった。
 他の少女を抱いていたのには単純にジェラシーを感じるし、それが翠を想ってのことだったのは嬉しくもある。千佳はいやがらせで、ドギツイ愛の言葉を康史に浴びせたと言ったが、それは本当に千佳のリップサービスだったのだろうか? また、千佳ではない別の娘とは、そういうなりきり過ぎたプレイを楽しんでいたのではないか?
「翠?」
「んん?」
「コワイ顔してるよ」
「ふえ?」
 いつもの妄想に入りそうになった翠は、慌てて自分の頬に手を当てた。
 千佳のコトは好きである。父親のコトも、もちろん好きである。だから、康史も千佳も、お互いを好き合ってくれたら嬉しい。他の娘とは違う、千佳なら大丈夫。翠はそう思っていた。
 だが、やはりどこかで千佳に対してジェラシーを感じていたようである。
 考えてみたら、母親に対しても似たような感情を抱いているのだ。恋人になったとはいえ、それは千佳に対しても同様であろう。単純な恋愛感情だけではないのだ。
 翠は自分のベッドに仰向けになって身体を開いている。見上げる視線の先には、恋人になったばかりの少女が覆いかぶさり、ふんわりとした手付きで翠の乳房を揉んでいた。
「あふ……。アタシ、思ったより独占欲が強いみたい」
 千佳の手が形の良い肉丘を柔々と優しく揉みつつ、ときおり固くなった乳首を掌で刺激する。男の愛撫とは違う、包み込むように柔らかな手付きに、翠の身体はふんわりと暖かな快感に満たされていった。
「あなたの独占欲なんて大したことないわよ。私に比べれば、ね。私は今でも、おじさまから翠を奪い取りたいって思ってるんだから」
 千佳は恋人の父親へチラリと視線を向けると、翠の脚を割り開くように膝を入れた。剥き出しの秘所に膝を当て、グリグリと力強くこすりつける。媚肉と膝の間から、ニチャニチャと卑猥な音が聞こえてきた。翠の身体は先ほどの父親との肉人形ごっこですでに出来上がっており、さらに全裸でお姫様だっこをされたことで、滴るほどに愛液が溢れている。それに、今もクラスメイトとの睦み合いを康史が楽し気に見ている、ということもあるのだろう。ふと父親の股間に目をやると、康史の男根は再び激しく屹立していた。複数プレイなどしたことの無かった翠の身体は、さっきまでの妬心を忘れて、今までに無い不思議な愉悦を感じ始めていた。
「舌、出して」
「ん……」
 言われるまま、翠は自分を見下ろすクラスメイトに向かって舌を出した。
 素直に差し出された舌を、千佳は自分の舌先でチロチロと焦らすように絡ませる。