三嶋家の浴室は広い。並みの建売住宅にある浴室に比べて、倍くらいの広さはある。当然ながら浴槽もゆったりとした大きさなので、湯船は二人で入っても十分な広さがあった。
 父親と同じ向きで腰を下ろした翠は、康史の両脚の間に身体を沈めた。そのまま恋人の身体に背中を預けてよりかかる。すると、ちょうど腰のあたりに固いものが当たってきた。
「……、なんか座りが悪い。お父さん、これ、小さくして」
「無茶言うな。……翠が小さくしてくれればいいんだがな」
「だーかーらー、それはダメって言ってるでしょ。それじゃ、足を閉じて」
「うん?」
 康史は、娘に言われるままに足を閉じた。
 翠は腰を上げると、今度は父親に跨るような格好で腰を下ろした。翠の股間から肉棒が生えたような形になる。父親の身体、というよりも肉棒に跨る体勢だ。少し腰の位置を変えるだけで、父親の肉棒は簡単に翠の蜜壺に入ってしまうだろう。だが、少女はかたくなに父親のモノを受け入れない。
「うふふ、どこかのお祭りみたい」
「んー、川崎のかなまら祭りだな。元々は江戸時代に川崎宿の飯盛女たちが、性病除けなんかを祈願したお祭りが最初らしいよ。ご神体がアレだから、最近は外人さんにも人気の観光スポットになっているらしい」
「飯盛女って? 昔のウェイトレス……、かな? なんでそんな人たちが性病除けなの?」
「遊郭ってのは知ってるかい?」
「知ってる。女の人を売ってたんでしょ? お父さんみたいなのが来てたんだ」
 女子高生を買っていた父親に軽い嫌味のつもり翠は言ったのだが、その翠自身も援助交際で自身を売っていたのだから大概である。
「そうだな。今の翠みたいな歳の娘が売れ頃だったらしい。飯の支度だけじゃなくって、こんな風に男に身体を任せていたんだろう」
「あん!」
 背後から翠の脇の下を通って、康史の両手が娘の乳房を鷲掴みにした。発展途上と言っても、それは母親の早季子と比べてのもので、翠の乳房は十分なボリュームを持っている。康史の掌で丁度覆われるくらいなので、それほど巨乳好みでなければ、むしろ丁度良いサイズであると言える。翠が部屋の姿見で自分の裸身をナルシスティックに眺めるのも、無理はないのかもしれない。
「昔は公に認められた場所でしか売春は出来なかったんだ。花街とかね。でも、風俗とか賭博なんてものは、禁止されると闇に潜ってしまう。だから、人が集まる宿場町なんかでは、お偉いさんから黙認されていたらしいよ。で、そういうところで身体を売るのが、飯盛女、今でいう宿の仲居さんだったりしたんだ。ただ、際限なく増えられても困るから、人数制限はされていたらしい」
「んふ……。変なの。黙認されてて、……んん、制限が、ちゃんとあったの?」
「その辺が、まあ、日本人らしい曖昧さってヤツだろうな。現実と理想の妥協点だったんだろう」
「ふーん。……さっきのリョウギ、だっけ? あれもそうだけど、お父さんって結構物知りだよね」
「まあ、オッサンだからな。伊達に歳は取ってないよ」
「でも、こっちは若いまんまだよね」
「コラ」
 胸を揉まれたまま、翠は自分の股間に生えたような父親の肉棒に触れた。媚肉で竿の部分にキスしているような状態であるが、康史の男根は今の雑談の間もずっと硬さを保っている。
 男の勃起というものは、実は結構メンタル的なものであることを翠は知っていた。大抵の男は、気を散らされるとコトの最中であっても萎えることがある。父親と同年代の男たちと何人も身体を重ねてきた翠であるが、挿入されているときでも、ふとした雑談で中折れしてしまう客は珍しくなかった。だから、ハズレだと思った客には、そういった雑談を仕掛けて終わらせてしまうこともあったくらいだ。
 だが、娘の乳房の柔らかさを楽しんでいるせいか、康史の肉棒は萎えるどころかさらに硬くなってきているような気がする。
「ああん! ダメだったら……。お父さん……」
「お前が気持ち良くなる分には構わないだろう?」
 さっきまでキリッとした口調で娘に雑学を披露していた康史であったが、今の声は随分と甘ったるいものになっていた。敏感な少女の耳に、吐息がかかるくらい近くで父親が囁いてくる。
 翠は、父親の甘い囁きにコクリとうなずいた。
 広い浴室に沈黙が降りる。聞こえてくるのは、翠が時折身体を揺らしたためにおこる水音だけ。
「ん……」
 相変わらず硬いままの肉棒に跨った翠は身体を預け、父親の手で乳房を揉まれるに任せていた。
 康史は力強く鷲掴みにしたかと思えば、下から持ち上げるようにして軽く揉んでくる。また、時々手を離しては、触れるか触れないかといった微妙動きで乳房全体にタッチしてきた。そして、翠の身体が焦れて震えだすと、まるでそのタイミングが分かっていたかのように乳首を摘み上げてくる。
「ひあんっ!」
 父親の両手が翠の脇に回ってきた。肋骨に沿って、指先がゆっくりと腹に進んでくる。さっきまでの積極的な愛撫が一転して、淡く優しく触れるフェザータッチだ。
「ん……」
 翠の腕が跳ね、水音が響く。
「んん……、お父さんの手付き、ホントにいやらしい……」
「そうか?」
「そうだよ……」
 父親の手が、自分の身体をまさぐっている。いやらしく、淫らに、そして例えようもなく気持ち良く。
「……?」
 だが、娘の身体のすべてを味わっているような康史の手の動きに、翠はほんのりと違和感を覚えた。愛しい男の手が自分の身体を淫らに這い回っている。それは確かである。
 しかし、その動きが、何かを確かめるようなものであると気付いた瞬間、翠は勢いよく立ち上がった。
「……今っ! お母さんと比べたでしょっ!」
 広い浴室に少女の声が反響する。
「な、なんだ?」
 康史は両手で何かを掴むような態勢のまま、目の前で立ち上がった娘の裸身を見上げた。
「お母さんと……、比べたんだ……、ぐすっ」
「お、おおい……っ。何で泣く?」
 康史は慌てて娘に触れようとした。
 だが、翠は反射的に父親の手を払いのけてしまう。
 今夜、父親と母親がセックスをする。だから、父親の身体を綺麗にして上げる。それは確かに翠の本心であった。だが、やはりそれだけではなかったのだ。
 愛しい男と自分の母親が身体を合わせる。翠にとって、それは自分の両親が夫婦の営みをするのとは別の意味を持っていた。
 一言で言ってしまえば、やはりそれは『嫉妬』である。理不尽な望み。歪な欲求。そう、翠は父親を愛している。
 だが、母親も好きである。父親の女である早季子に嫉妬心を覚えるが、同時に早季子は母親として好きでもある。理不尽だと思いつつも、翠は溢れる感情が抑えられなかった。
「泣いてないっ! 何でもないもんっ! アタシが……、アタシがまだ子供なだけなんだから……。すぐにお母さんみたいになるんだから……」
「翠……」
「分かってる……。これは、アタシのわがまま。でも、でも……」
 翠は涙を拭き、決然と父親を見つめた。紅くなった瞳で無理に笑顔を作る。
「だから! お父さんのしたいコト、全部してあげる! お母さんに出来なかったコト! したくても言えなかったコト! 言っても断られたコト! 全部ぜんぶ! アタシがしてあげる!」
 両腕を広げ、発展途上の胸を父親に見せつけながら、翠は血の繋がった実の父親に宣言した。
 康史は、一瞬呆けたような顔を見せた。そして、翠の眼からハッキリと分かるくらいに生唾を飲み込んだ。
「い、いいのか?」
 翠がそんな父親の表情を見たのは初めてであった。仕事でも家庭でも、いつもは自信たっぷりだった父親が見せる、期待と戸惑いの入り混じった顔。その表情を見られただけでも翠は満足してしまいそうになったが、そこはグッと堪えて父親の答えを待った。身体を開け放ち、女らしく成長した乳房も、うっすらと陰毛の生えた秘所も肉親に晒して、翠はオトコを誘い入れる顔を父親に向ける。
 再び沈黙が浴室に満たされた。
 天井から水滴が湯面に落ち、耳当たりの良い音を立てる。
 どのくらい、父娘は見つめ合っていたであろうか。行き場を失った手を下ろし、康史はいつも通りの優しい笑顔を娘に向けた。
「オレが何をしたいのか、知ってるのか?」
「知らない」
「オレが何を隠してるのか、知ってるのか?」
「知らない」
「オレは……、普通とは違うのは知ってるのか?」
「それは知ってる。実の娘に欲情する変態なのよね。でも、アタシにはそれで十分だもん。お父さんとアタシは恋人同士。お互いに何も隠さない。秘密にしない。したいことは全部言うの。されたいことは全部求めるの。それでアタシは……、お母さんと対等になれる……」
「ふう……。やっぱり嫉妬なんじゃないか……」
 ここにきて、翠はようやく完全に認めることが出来た。
 母親のことは好きである。
 だが同時に、母親に対して昏い嫉妬心もある。
「うん、そう。アタシは、お母さんにジェラシーを感じてるの。お母さんがお父さんの隣にいるのが羨ましい、お父さんとエッ……、セ、セックスするのが妬ましい。これまで、お母さんがどれだけお父さんに愛されたのか、それを考えるだけで身体が熱くなるの。アタシも同じくらい愛してほしい。ううん、それ以上に愛してほしい。だって、お父さんとお母さんが付き合ってきた時間には、どうしたって勝てないんだもん」
「そうか……。おいで、オレの可愛い翠」
「うん!」
 翠は満面の笑顔を浮かべて父親に抱き付いた。お湯が二人の間で激しく波打ち、湯船から勢いよく溢れ出す。
「好き。お父さんが大好き!」
「オレも好きだ。翠、愛してる」
 昨日、父親と結ばれたのは、ある意味では不完全なものであったのかもしれない。
 偶然の場で、勢いと溢れる想いだけで翠は父親と繋がったように思えた。
 だがそれは、『セックスをしただけで恋人気取り』という状態であったのだろう。昨日、父親と結ばれたという嬉しさだけで翠の心は満たされていたのだが、男と女の本当の付き合いはこれからなのだと翠は思った。恋人になるのではなく、恋人になっていく。
 翠は、父親の嗜好を知らない。父親がどんな風に母親を愛しているのか知らない。これまで、どんな少女たちを買っていたのか知らない。
 そう、知らないことばかりなのだ。
 だから、話そうと思う。聞こうと思う。康史がどんなコトをしてきて、どんなコトを望んでいるのか。
 そして、翠も康史に伝えたい。どんな男たちに身体を売ってきたのか。康史とどんなことをしたいのか。
「お父さん……」
 拳一つ入るくらいの近い距離に、愛しい父親の顔がある。二人は目を瞑り、お互いの唇に吸い付いた。そのまま競い合うようにして、相手の口内に舌を挿し入れる。
「ん……ふ……」
 父親のすべてを受け入れよう。
 そう決意して、娘は父親の舌を自分の口内に迎え入れた。